アノオト

2014.06.13

「コク」のある音

食べ物に対して、よく「コク」という表現が使われる。

なんとなく、「コクのある感じ」というのはイメージできるけれども、「具体的にコクって何?」と言われて、パッと答えられる人というのは、なかなかいないのではないだろうか? ちょっと気になって調べてみたところ、こんな記事に出合った。

百珈苑「コク」

サッと斜め読みするだけでも、「コク」というものがいかに複雑で曖昧かというのが分かる。

場合によっては脂分だし、また別の場合は微量の雑味、さらには舌触りなんてのが影響する場合もある。少なくとも、何でも脂を入れておけばいいよね、ということではないのは確かだろう。

さて、音に関してもこれと同じようなことは多々存在する。例えば「音の太さ」だ。

「太い音」って何だろうか?

なんとなくの印象では「太い」と言うと低音が効いているイメージだろうか。それなら、ということで低音を上げてみたりするわけだが、だいたいの場合
結果は単にモコモコするだけで太さとは程遠い音になる。

じゃあ歪みかな? ということで歪ませてみたりすると、これは成功することもあるけれども、逆にギーギーしてやせた音になってしまうこともけっこうある。

こうしてみると「太さ」の感覚は音の種類によっても違うし、単純にこのパラメータを上げたから太くなる、というものでもない。おそらく微量なノイズや歪み、周波数バランスのちょっとした違いなどが複雑に影響しあっているに違いない。

まさに「コク」と同じだ。だからこそ、これだけデジタルのクオリティーが上がった今でも、「アナログは音が太い、デジタルでは出ない音だ」みたいな話が存在するのだろう。

ちなみに、10年前に同じ話をしたならば、ここで「やっぱりアナログ最高だネ!」と言って終わりになったのかもしれないが、近年のデジタル処理は恐ろしいもので、例えばアンプシミュレーターなどは日々リアルさと太さを増し、だんだんと「アンプ不要」なレベルに近づいている。

そう、「太さ」やその他の特徴も、要因さえ分かれば再現できてしまうのもまたデジタルなのだ。

将来的に、デジタルが「太さ」の要因を再現し切って、アナログを徹底的に淘汰していくのか、それとも最終的に解明できない謎が残るのか、興味のあるところだ。

[Photo by m00by

この記事をかいた人: 除村武志

慶応義塾大学理工学研究科計測工学専攻修了。8bitミュージックユニット「YMCK」の作詞・作曲・サウンドプロデュース担当として米国・スウェーデン・オランダ・フランス・タイ・韓国・台湾など各国で国際的なフェスやイベントに出演。iOS/MacOSアプリ開発も行い、MacOS用AudioUnitプラグイン「Magical 8bit Plug」は世界中で愛用されているほか、iOS楽器アプリ「YMCK Player」もライブパフォーマンス用ツールとして評価が高い。