アノオト

2014.04.19

音楽とお金との関係〜作曲と経営の共通点〜

「音楽を始めたキッカケは、純粋に好きだから」という人も多いと思いますが、その活動の中で付いて回るのが、やはりお金との関係。楽器やCDなどの趣味に費やす分には単純に経費として扱えばいいけど、音楽をビジネスとして考えた時には、軽いジレンマを起こしてしまいます。

音楽を始めたらまずは音楽教室へ行く人も多い。その時に「これは趣味なのか、自分への投資なのか」を、まずは念頭に置いて考えてみましょう。投資であるなら、その結果として考えられる1つが「音楽教室の先生」です。大手の音楽教室の先生は基本的に非常勤で給料の額は講師のスキルと生徒数に比例するので個人差はありますが、例えば、結婚して世帯主となり家族を養う立場だと少々厳しいかもしれません。

もう1つ、演奏会を開いてチケットを売る、つまりプロの演奏家になることが考えられます。演奏会は、音楽を演奏する楽しさや、友人との交流などももたらし、生活を豊かにしてくれます。ですが、会場代も無料ではなく、お客さんにチケット代を支払ってもらうには、演奏のクオリティや選曲など、スキルアップやマーケティングの要素が必要になってきます。二回、三回と継続して来てもらうには、彼らが来て良かったと思える”仕掛け”を創る工夫も考えてみるといいかもしれません。一歩間違えると、自分とともに演奏するメンバーや知り合いだけに向けた「内輪受け」に陥る懸念がありますが、お客さんも一体となり楽しんでもらえて初めて、自分のアイデンティティも認められるのではないでしょうか。

音楽を仕事とするケースには、この他に、自ら仕事を企画する「プロデューサー」としての立場もあります。こちらになると、選択肢がグッと増え、どういう企画を立てるのか、皆さん試行錯誤をするようです。「利益を確保する」という、もう一つの目標があるから、そのためのロジックが必要となってきます。最近ではインターネットの普及でダウンロード販売が主流となり、CDの売り上げが激減しています。しかし、一方でライブなどの売上は好調のようです。これは時代とともに、物品よりもアーティストや会場のファン同士との時間の共有へと価値がシフトしていったことの表れでしょう。そういった環境の変化も敏感に捉え、企画に応用できるセンスも必要です。

クリス・アンダーソンの著『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』では、ライブで収益を得る方法が記載されています。詳細は省きますが、前段階の準備として、事前にそのアーティストのCDを無料配布するという戦略で、それがライブの売り上げをグッと押し上げる結果に繋がったのです。

これらの例に限らず、経営という指標で企画を立てる場合、時間軸に沿った計画がモノをいいます。着地点はどこか、広報活動をするのはいつの時点が効果的か…。これによって生まれた企画は、時間の経過を用いた芸術であり、偶然にも作曲のプロセスと酷似しています。

しかしながら、音楽活動はメンバー同士との連携が不可欠。完璧に練られた計画を昇華させるためにはメンバーとの信頼関係を築くこと。それが成功すれば経営的にも好循環な状況を持続させられるのです。

Photo by Philips Communications

この記事をかいた人: 羽田 航祐

国立音楽大学作曲学科卒業。6歳の頃からエレクトーンを始め、中高は音楽部に所属し、合唱や和太鼓等を披露した。大学在学中はポピュラー音楽のアレンジを担当する。卒業後はレコード会社での販促活動等を経て、出版社「スカイポートシステム」を設立し、楽譜の企画を行う。後に一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程を卒業し、音楽と経営の2つの主軸を持つ編集者を目指し、自らもゲーム音楽等の演奏会に参加している。