アノオト

2013.12.12

ファミコンをラジオ送信機に変えてしまう“アナログメディアイノベーション”

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明和電機社長の土佐信道さんが先日、

ツイートしていて、これが大きな話題になりました。そういえば、受信機の扱い方が分からない子どもが増えていることは以前から実感していたので、そういう声が聞こえてくるのも当然だなと思いました。受信機でラジオを聴くという経験がこれほど当たり前でなくなってくると、アナログの電波で音や声を送ったり受けたりすることじたいが、今では逆に新鮮で、貴重なことのように思えてきます。

“ラジオ・アーティスト”の毛原大樹(けはら・ひろき)さんは、使われなくなってしまったラジオ受信機やテレビ受像機、ビデオデッキなどの古いメディアを活用する「アナログメディアイノベーション ワークショップ」を展開しています。写真は2013年11月、YCAM(山口情報芸術センター)で毛原さんがおこなった、ファミコンをラジオ送信機に変えてしまうワークショップです(筆者たちが企画したシンポジウム「ラジオのメディア・エコロジー」の中で実施されました)。


作業はかんたんです。RCAケーブルをハサミで切って、皮膜を剥いて、中の導線を二つに裂くことで自作アンテナのできあがり。これを初代ファミコン本体のRF出力端子に接続すると、FM帯域の微弱電波が発生して、ラジオ受信機でゲーム音をキャッチすることができます。参加者が持っている受信機からいっせいに「スーパーマリオブラザーズ」の「テテッテッテレッテ」が聞こえてきて、通りすがりの子どもたちも駆け寄ってきました。

ゲーム音だけではありません。往時は用途が限られていたⅡコンのマイク(!)を使うことで、人間の声も電波に乗せることができます。

さらに、ファミコン本体には周波数変更スイッチがついていて、テレビと接続するさいの周波数があらかじめ二つ用意されています。そこで、2台のファミコンと2台の受信機を使い、相手の周波数にチャンネルを合わせることで、まるでトランシーバーのように双方向通信をすることも可能。ファミコンのポテンシャルが最大限発揮されていました。

ちなみに、毛原さんがこの日持参した2台のファミコン本体のうち、片方の調子が悪くなってしまったので、YCAMの方がハードオフに走って、中古品を525円で買ってきてくださいました。安く手に入るんですねー。

このワークショップは、「通信」と「放送」が乖離する以前の無線技術の特性に触れ、古いメディアが新しかった時のわくわく感を体験できるという意味で、極めてメディア論的な遊びといえるでしょう。微弱電波を使ったミニFM80年代に流行したことがありました。マスメディアとしての放送は、常に受信と送信の立場が固定的で、送信する側に立つのは難しいのに対して、受信するのは極めて容易です。ミニFMはその関係が完全に逆転しているという点で、マスメディアとしてのラジオに対する批評的な営みといえなくもありません。古くて新しいミニFMは、ネット時代のラジオ文化を考える重要な手がかりになるような気がします。

(Photo by tatsuo sugimoto

この記事をかいた人: 飯田豊

立命館大学産業社会学部准教授。1979年広島県福山市生まれ。専門はメディア論、メディア技術史、文化社会学。メディアの技術的な成り立ちを踏まえて、これからのあり方を構想することに関心があり、歴史的な分析と実践的な活動の両方に取り組んでいます。編著に『メディア技術史 ―デジタル社会の系譜と行方』(北樹出版)、共著に『ヤンキー文化論序説』(河出書房新社)、『IT時代の震災と核被害』(インプレスジャパン)など。