アノオト

2013.12.07

この世界に、楽曲は何曲存在し得るのか

かなり昔に、友人だったか、その知り合いだったかが、「音階って12音階しかないから、音楽はいずれ作り尽くされてしまうんではないか?」ということを言っていた。

確かに、曲を作っていても、何かと似たような曲になってしまうことがよくあるし、先人の名曲のような過去の成果も脈々と積み重なっているわけで、だんだん可能性が狭まっていく感じはある。とはいえ、未だに日々次々と曲は作られ続けているし、よほどパクリと言われるもの以外は、どれもそれなりに違う曲に聞こえている。そう考えると意外に可能性は広いのかもしれない。

ということで、結局、曲のバリエーションってどれくらいあり得るだろうか? というのが気になったので、ものすごくざっくりとそれを計算してみた。「曲」を構成する要素には、メロディ・リズム・ハーモニーの他に音色や歌詞なども含まれるが、ここではひとまずメロディのバリエーションだけを考えることにしてみる。

メロディのバリエーションを計算する方法として最も単純なのは、12音階の組み合わせを考えることだろう。しかし、12音階の組み合わせの中でも、音楽的に聞こえる組み合わせは限られているし、ちょっと音程を変えただけでは、同じ曲に聞こえてしまうこともあるわけだから、それを全部カウントするのは見積もりとして“盛りすぎ” になってしまう。

そこで、もっと大雑把に、メロディを「音程の上がり下がり」と捉えて計算してみる。これならかなり控えめな見積もりになるだろう。すると、ある音程から始まるメロディがあった場合、それが次に展開する可能性としては、
・音程上がる
・音程下がる
・音程維持
・休止
の4通りがあることになる。さりげなく「維持」と「休止」を入れたが、同じ音程が続くことを許容しないとメロディは作れないし、休符がなければ延々と息継ぎをせずに続くメロディしか作れなくなってしまうので、どちらも入れてしかるべきだろう。

この仮定のもと、16分音符を16個並べて 1小節のメロディを作ることを考える。この長さがあれば「スーパーマリオブラザーズ」の「テテッテッテレッテ」のようなインパクトのあるフレーズを作ることができる。

最初に1つの音符を配置した後、次の音符がどう展開するかについては、上記の通り4つのバリエーションがあることになる。では、さらにもうひとつ進めた場合はどうだろうか? 上記の4バリエーションの中に、「それぞれ」4つのバリエーションが生まれることになる。つまり、4+4ではなく、4×4=16通りだ。

このようにして残りの音符を並べていくと、次は4×4×4、その次は4×4×4×4…で、最後は4×4×4×4×4×4×4×4×4×4×4×4×4×4×4、つまり、4の15乗となる。電卓をはじいて計算してみると、

4^15 = 1073741824

で、総数約1億。日本の人々が1曲ずつ作ると作り尽くされてしまう計算だ。1小節でインパクト勝負なものは作り尽くされてしまう運命にあるのかもしれない。

しかし、1小節のインパクトだけが曲ではないわけなので、次に、もう少しメロディックに、8分音符を32個並べた4小節のメロディを考えてみる。「からす なぜなくの からすはやまに」で、この長さだ。

この場合、音符は32個になるので、掛け算は15回ではなく31回になる。

4^31 = 4.611686018 x10^18

桁が多すぎて指数になってしまったが、おおよそ「460京」。これでは、うってかわってどれくらい多いのかすらよくわからない数字だが、iTunes Storeに登録されている曲が250億曲(2.5 x10^10)というから、それより8桁、つまり1億倍以上多い計算になる。

言い換えれば、すべての日本人が今iTunes Storeに上がっているのと同じだけの曲数を作らないと、すべてを網羅することはできないということ。少なくとも生きているうちに作り尽くされることはなさそうだ。

さて、上記は想定の範囲を「メロディ」に限り、かつ「上がる・下がる・維持・休止」のみ考慮という非常に大雑把な仮定のもとで計算した結果だ。実際には、半音階を複雑に組み合わせた微妙なニュアンスのメロディもあるし、似たメロディでもリズムやハーモニーの付け方でまったく違う曲に聞こえることや、音色・歌詞でがらりと変化することもある。そもそもミニマルテクノのようなメロディのほとんどない曲や、各種民族音楽のように12音階以外で作られている曲もある。

こうして考えると、曲作りの可能性はまだまだ無限大と言えそうだ。

[Photo by Carl Collins

この記事をかいた人: 除村武志

慶応義塾大学理工学研究科計測工学専攻修了。8bitミュージックユニット「YMCK」の作詞・作曲・サウンドプロデュース担当として米国・スウェーデン・オランダ・フランス・タイ・韓国・台湾など各国で国際的なフェスやイベントに出演。iOS/MacOSアプリ開発も行い、MacOS用AudioUnitプラグイン「Magical 8bit Plug」は世界中で愛用されているほか、iOS楽器アプリ「YMCK Player」もライブパフォーマンス用ツールとして評価が高い。