アノオト

2013.11.28

日本の名画が20世紀の名曲を生んだ!〜葛飾北斎とドビュッシー〜

その絵を見た瞬間に彼の脳裏に激しい稲妻にも似た衝撃が走ったかどうかはわからない。

しかし、確かにその絵から彼は何か贈り物を受け取った。

そして彼は受け取った物から形を変え、我々に贈り物を届けてくれた。

『海』という偉大な曲の誕生である。

芸術とは創作する者の内なるモノを表現することに他ならない。

インスピレーションはどこからやってくるのか?

それは人類にとっての永遠の謎であるのかもしれない。

しかし、それでもごく稀にではあるがインスピレーションを与えた物がはっきりしていることがある。

今回は、その一例として絵画によってインスピレーションを与えられた作品について紹介しよう。

今回取り上げるのはフランスの作曲家、クロード・ドビュッシーが1905年に作曲した

交響詩『 – 管弦楽のための3つの交響的素描』である。

この『海』という作品は当時にとって受け入れがたい作品であったことはドビュッシー研究の第一人者フランソワ・ルシュールの発言からもみてとれる。

「このスコアの特殊性が読み取れるようになるには、数世代が必要だった。それほど、『海』のスコアは、伝統的な分析には捉えがたいのだ。」

この発言と後にこの作品が印象主義音楽を代表する作品であり、近代音楽史上最も重要な作品の一つであると言われたことは無関係ではあるまい。

そして、この印象主義的音楽にインスピレーションを与えた絵画こそ、かの有名な葛飾北斎の富嶽三十六景『神奈川沖浪裏』であることは偶然ではあるまい。

北斎の絵がヨーロッパに渡りゴッホなどの印象派に影響を与えたことは広く知られているが、その影響範囲が絵画に留まらなかったのは、北斎の絵にはインスピレーションを与える普遍的な『何か』があったのだろう。

そしてドビュッシーは『海』を作曲した。

もちろん、この北斎の絵が彼の作品全編に渡って影響を与えたわけではなかろう。

インスピレーションとは一瞬の閃きであり、彼の脳の中の点と点を繋ぎ合わせる程度の小さな影響だったのかもしれない。

ただ、ドビュッシーが1905年に出版したスコアの表紙にこの名画を選んだのは北斎への尊敬もしくは謝意の表れと見るのはうがち過ぎであろうか。

作曲期間中のスキャンダル(妻の自殺未遂)もあり、初演からしばらくの評判はあまり芳しくはなかったようであるが、徐々にその評価は高まっていき、主要な管弦楽作品として定着していくこととなり、ついには20世紀を代表する傑作としての評価が確定する。

なお、ディズニーシーで上演されていた『Over the Waves』の前奏曲として使用されていたのはwikipediaからの豆知識である。

最後にドビュッシーがこの曲でやろうとしていたことをドビュッシーの言葉から引用する。

「音楽の本質は形式にあるのではなく色とリズムを持った時間なのだ」

この記事をかいた人: イノケン